有心会からのお知らせ

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71歳、剣道愛好家から学者に変身 ー医11回生 十河勝正先生ー

有心会の皆様お元気ですか。 小生、本日、白血病の治療を受け順調に経過していますが、血尿が出て泌尿器科に受診し少し焼けばよくなりますと言うことで入院しましたら、膀胱出血が酷く4時間毎に激痛が襲ってきて、夜昼関係なく24日間苦しめられました.まさに地獄でした 

                         

東京医科歯科大学精神神経科同窓会会報誌に掲載した文章です。中谷先生が宮坂先生に私の文章を渡されて、この文書を有志会の雑誌に投稿したらどうかと言われて、投稿させていただきます。

 

71歳、剣道愛好家から学者に変身

 

                              医11回生 十河勝正

2009年、71歳の時に、自分では全く予想しなかった出来事が起こりました。私のクリニックに通院中のPTSDの患者でFlashbacksが極めて酷い患者が腹痛を訴えてある病院に行き、細菌性下痢症と診断され、ブスコパン(抹消性抗コリン剤)と抗生物質の入った点滴を受けた。約20分後、9年間苦しんだFlashbacksが完全に消失した。2009の不思議な臨床治験から剣道愛好家から町の医学研究者に180度転向した。学問から長い事離れていたので論文を仕上げるのに大変苦労しました。最初にLANCETに投稿したら、“ your paper is very high quality and tremendous possibility ”審査員から褒めて頂いたがRCTでないため、ACTAに頼み、ACTAの姉妹オープンアクjournalに移行してくれ,2021,5,21に受理された。

次のページにプレスリリースとして掲載しましたのでお読みいただければ幸いです・。

 

2009年、71歳の時に、不思議な事が起こった。当医院に通院しているPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者から大きなヒントを得て、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の従来とは全く異なる世界で初めてのPTSDの中核症状である再起性症状(Flashbacks, Nightmares)の発生機序を発見した。この患者は腹痛を訴えて病院に行き、細菌性下痢症と診断され、抗生物質と末梢性抗コリン剤(scopolamine butyl bromide:ブスコパンファイザー動物実験ではこの薬のBBBの透過性は0.01%)を混注した、20分後に長年苦しんできたフラシュバックスは完全に消失した。Scopolamine は末梢性抗コリン剤で常識的に考えて、脳血液関門(BBB)を透過しないので脳の中に入らない。脳の中にBBBを透過して入らないので、常識に考えてプラセボ現象と考えるのが普通である。しかし、本人と患者の母は本当に効いたと真摯に話した。私はプラセボ効果でなく真実と考え効果機序の解明に努力した。

76歳まで剣道最高位の八段を目指して剣道に夢中で稽古に精進していたが、とんでもない大きなヒントに出会い好きな剣道を控え、研究者の道を72歳と言う高齢で歩むことに成りました。

 

昭和の宮本武蔵といわれる中倉清剣道九段範士に偶然出会い、自分の人生が大きく変わりました。中倉清名人は言葉に表せないオーラを感じ、その名人に大切にしていただき、弟子にして頂き思いがけない人生を送らせて頂きました。広島で2度の全日本医師剣道大会を開催し、2回剣道大会で優勝し、韓国で開かれた世界剣道選手権大会の前日、親善試合に全日本剣道連盟から推薦され台湾の選手と引き分けました。剣道からいろいろな事を勉強させて頂きました。剣道の言葉に”合気”と言う言葉があります。毎日の診療にその様な気持ちで患者さんの気持ちに合わせて対峙しております。又、ある稽古会で同年配の広島県県警剣道師範が膝を痛めて正座が出来ないのに、稽古と成ると痛みを我慢して一生懸命稽古をやる彼の姿を見て私には出来ない事だと感じたのですが、彼にとっては、剣道は天職です。だから出来るのだと思いました。同時に、剣道は私にとっては趣味で、天職は医師と言う職業です。彼から“医師は天職なり”と教わり、それ以来、毎日を北大出の息子と84歳ですが抵抗なく楽しく頑張っております。

 

話を元に戻しますが、BBBを透過しない筈の末梢性抗コリン剤:scopolamineがBBBを透過したのは、東大脳学者;有田秀雄の書籍に説明が記されている。有田先生の考えが大きなヒントになり、PTSDの全く新しい発生機序の発見に大きく繋がった。有田先生の考えは(2006, system neurophysiology of substances in the brain: neuroscience of mentality and vigor: P167):脳の中のアセチルコリン基底核・Ch4(Meynert 核、全部で8個あるACh基底核の中で一番大きい、アセチルコリン分泌が最大)が異常に興奮するとアセチルコリン神経を介して細動脈の周囲を取り囲んでいるアストロサイト・capilary endothelial cell       のムスカリン受容体を刺激してBBBの変容を来すと述べている。この患者はPTSDによる脳の異常な興奮状態をきたした為、BBBの透過性が増し末梢性抗コリン剤:scopolamineが適当量(多量では悪化すると言われている)、幸運にも脳に入り、Ch4(Meynert)を抑制して、20分後にFlashbacksが完全に消失したと考えられる。Ch4(Menert核)-扁桃体-、Ch1,Ch2-海馬-CORTEXへと双向性連結し、PTSDの中核症状である悪夢は幹脳部にある逆説睡眠を起こすCh5, Ch6もFlashbacksを起こす発生機序の原因と繋がっていると考えられる。我々のPTSDの薬効がFlashbacksと同時等価性に起こる臨床現場からの臨床結果から考えられる。まとめて言えば、Ach-Related -Memory-Circuitの異常興奮がPTSDの中枢性症状を起こす。このPTSDの発生機序から見出した中枢性抗コリン剤:Trihexyphenidyl(アーテン)がPTSDの中核症状である再起性症状(Flashbacks,79%, Nightmares, 88%の効果)に著効し。極めて速効性(1-1.5時効果発現、1 週間で症状消失、2-3週間で症状安定)がある事をLANCETに投稿した。審査員は“your paper is high quality and tremendous possibility、but not formatted form”とRCTでない為に断られた。次に、ACTAに投稿したら姉妹オープンアクセスジャーナルのBrain and Behaviorに移行してくれた。この編集長はハーバード大学出身の医師で柔軟性があると期待した。1名の審査員全く話にならない学者であった。あり得ない事はすべてプラセボと言い切、RCTでないとダメだと言われ大変ストレスを受けた。今までの医学歴史上を顧みると、あり得ない事が起こり大きな発見に繋がった事は多々見てきた。岡山の林原産業の社長は発見を自分がやろうと思っても出来るものではない。天から降りて来るものだと言っていましたが、まさにそうだと思います。

PTSDの中核症状は機序が解明されていない為それぞれの意見があり、日本のPTSDの著名な学者である一人は中核症状を2個、他の方は3個挙げられているが、私は発生機序に基づいた中核症状である再起性症状(Flashbacks, Nightmares)が2個の中核症状だと確信する。

PTSDの発生機序はまだ世界的に解明されておらず、アメリカではケタミン・エクスタシーが話題、日本では認知症の薬メマンチンが話題になっているが効果は明確ではない。抗うつ剤動物実験で、抗鬱剤が海馬神経細新生作用に効果があると言う事で抗うつ剤パキシルジェイゾロフトPTSDに追加適応されたがあまり効果はない。メマンチンもアメリカの論文に中核症状である再起性症状(Flashbacks, Nightmares)には効果がないと記載している。日本のメマンチンの研究の某国立機関も臨床治験に10名募集3名辞退してオープンラベル法で治験した。効果は有ったとの事であったが、基準が曖昧で臨床件数がたったの7名であるがすぐ論文に受理された。そごうクリニックは町の医師である。大きな医療機関は曖昧な臨床治験結果での論文受理が速いのには驚いた。私は一生懸命に論文投稿に長年努力しているのに簡単に受理される。13年間の論文投稿に全生命をかけて頑張った。RCTでないとダメと言う審査員に、RCTで効果承認された新薬で効かない新薬が多々あった。RCTで効果を真に判定するのは臨床現場である。あり得ない事が臨床現場で起こる事で大きな発見に繋がるのも臨床現場で、大切さをつくづく実感した。

84歳で寅年であるが、研究で日本国内、外国でいろいろと発表活動したら、ある著名な先生が国内・及び国際のCINP薬理学会の評議員に推挙されビックリしております。

先月、体調が余りよくなくて血液検査をしましたら、今まで見たことのない真黒な色の採血血液で心配で広島日赤血液内科で慢性骨髄単球白血病と診断され、先週高齢者自動車免許証の更新に成功しました。すこし迷いましたが既に84歳ですので考えても良いideaも浮かびません。天命に従って生きる事だと思いました。

 

早く開業しましたので自分で自分の自由は時間を作る事が出来、ミクロネシア諸島、ヨロパー、中国、アメリカ、オーストラリア等と旅行し、一番感動したのはアイスランドへの旅でした。台湾・ハワイ・韓国・パリには剣道旅行で数回行きました。香港にはミッドナイトベット号で香港Cap(Grade1)に優勝、ワールドエース号で日本ダビーに出場し一番人気で残念ながら4着でした。

最新の先端技術を駆使してPTSDの発生機序であるAch-Memory-Related-Circuitを視覚的に解明していただきたいと願っている。

ごく最近、インドでPTSDラットに中枢性抗コリン剤:Trihexylphenidyl:を与えると改善を認めたという論文が出た。

同窓生の皆さんのご活躍とご健康を心よりお祈り申し上げます。

 

医療法人そごう会そごうクリニック、そごうーPTSD-研究所

732-9824, e-mail:sogoutiger★nifty.com

十河勝正。